みなさんこんにちは、美容クリニック医師の大石です。
さて今回は、僕が働いている美容業界の、市場についてです。
みなさん、美容業界の市場って、今どんな感じかご存知でしょうか?
なんとなく肌感覚的に、伸びている、成長している、みたいなイメージがあると思います。今回はそこを具体的にまとめました。そこに僕の意見と、予想も交えて、網羅的に解説していきます。
拡大する美容市場
矢野経済研究所の資料によれば、美容市場は年率15%前後で拡大をコンスタントに続けており、未だその市場拡大の勢いは止まることがありません。
参考:https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP613360_Y1A620C2000000/
グラフを読み解くと、リーマンショックの影響があった年は軽微に減少していますが、それ以降は上昇を続けています。
経済の影響が全くのゼロではないものの、それでも底堅い需要があり、かつ成長性が十分担保されているのが、美容市場だと言えるでしょう。
美容市場の拡大は世界的なトレンド
また日本以外の市場に目を向けても、中国や韓国はもちろん、世界各国でこの美容市場の拡大は止まる気配がなく、ひたすら成長と拡大を続けています。
美容市場の拡大は、もはや地球全体を覆った、大きな1つのトレンドであるのは間違い無いでしょう。
美容市場の拡大トレンド、その原因は?
世界各国、地球規模での美容市場の拡大が止まりませんが、一体これはどういうことなのでしょうか?
というのも、中々地球レベルで起こる1つのトレンドとして、年15%の市場拡大率は結構大きいですので、これには何か裏付けになる理由があるはずです。
僕が思っている原因は、スマホとカメラの普及です。
昔はカメラといえば、インスタントカメラを除いて撮影したら現像しなければすぐに見ることができませんでした。
それがデジタルカメラになり、すぐにその場でどんな感じの写りかを確認できるようになりました。目を瞑ってしまっていたり、ブレていたら撮り直ししよう、みたいな会話がデジカメを持った人の中で繰り広げられていました。
時代は変わり、世界中の誰もがスマホを持ち、カメラを持つようになりました。
そうすれば当たり前のように、ひたすらにスマホで写真を撮ります。美味しそうなご飯、綺麗な風景、ペットの写真、家族や友人の写真。
そうです、現代人は昔よりも、カメラを撮影する機会も増えましたが、同時にカメラに映り込む機会も圧倒的に増えているといえます。
写真を撮られる機会が増えれば、当然のように
○ 自分はどう写っているのかな
○ 変な顔していないかな
○ えっ、自分ってこんな感じで写っていたの?
○ もっと美しく撮られることはできないかな
と思ってしまうのは、自然なことです。
さらにこの状況に拍車をかけるのが、インターネットの普及です。
5G回線が展開され始め、画像だったものが動画へ切り替わり始めています。
いわゆる、ショートムービーというやつですね。
2021年、2022年あたりはこのショートムービーがデータとしては一気に市場が拡大した年で、その顕著な数字がTikTokやInstagramのストーリーズ、リールに現れています(わからないという方は、勉強しておいた方が良いです、これからの美容業界のウェブマーケティングには必須になると思います)。
動画になると、いわゆる写真で「盛る」ことができない、2Dの画像データではパッと見て可愛く見えるように誤魔化すことができましたが、動画だとそれが難しい傾向にあります。
最近のスマホカメラの画質も、一眼レフと遜色ないくらい進化しました。画質向上も、いわゆる誤魔化しが効かない、ちょっとしたシミやシワが気になる等の心理状態を引き起こしている原因かと思われます。
つまり、人はより「本当に美しい状態」を、強く求めることになるという事です。
SNSの普及が「美のインフレ」を起こした
さらにこの状況に拍車をかけているのが、SNSの普及です。
SNSによって相互的に情報を交換できるようになり、能動的に交換しなくても、相手からの情報を一方的に受け取る事ができるようになりました。
逆にいえば、自分の持っている美しさを、インターネットを経由して多くの人に見てもらう事ができる、少し悪い言い方をすれば「ばらまく」事ができる世の中になったわけです。
結果、当たり前のように「より美しい状態を欲する」人が増え、これにより美容市場が拡大しているのではないでしょうか。
僕はこの状態を「美のインフレ」と呼んでいます。
どうでしょう、今の若い子等は、一昔前の子等と比べて、美しさに気をかけ、実際に美しい事が多いように思いませんでしょうか?
この「美のインフレ」は、おそらく止まる事が無いでしょう。
言われてみれば人間は、最初は化粧なんてしていなかったはずです。生きるために決して必要な工程ではありません。
しかし、江戸時代に描かれた浮世絵では、女性は髪をゆい上げ、白粉を塗って肌を白くみせ、唇には紅を塗って、自らの顔を装っていました。
人間には「より美しくありたい」という、美への欲求が根強くあるのだと思います。
そこにテクノロジーの進化によって、医療脱毛レーザーやシミ取りのレーザーが生まれ、今後も「より低侵襲でより効果のある」医療機器や商品が開発され、市場に投入される事でしょう。
美のインフレの終焉、そのあとは?
しかしながら、無限にこのトレンドが続く事は、流石に無いでしょう。
終わりは未だ見えませんが、いつか終わりは来るはずです。
そうなると、自由診療であるがゆえに、一気に需要と供給曲線が壊れ、価格破壊が起こる可能性があります。
美容市場の拡大はまだあるトレンドだとは思いますが、それだけにならず他の所得、例えば不動産の収入がある状態にしておくなど、将来市場が変化した時に耐えられるような「収入の複線化」が、必要かもしれません。
▼著者
大石龍之介
株式会社ブルーストレージ代表取締役。医師としてクリニックに勤務しながら、不動産投資家としても活動している。