大学病院で働く医師の年収について詳しく解説します。なぜ大学病院の医師の給料は他の勤務医よりも低いのか、また年収を上げる方法についても考察します。
大学病院における医師の年収
労働政策研究・研修機構が報告した情報によると、大学病院における医師の年収は、約739.5万円です。
経営形態 |
300万円未満 |
300~500万円未満 |
500~700万円未満 |
700~1,000万円未満 |
1,000~1,500万円未満 |
1,500~2,000万円未満 |
2,000万円以上 |
平均年収 |
国立 |
6.4 |
14.2 |
15.7 |
22.8 |
27.4 |
11.9 |
1.5 |
882.4 |
公立 |
1.2 |
2.5 |
4.1 |
9.7 |
37.9 |
36.5 |
8.1 |
1347.1 |
公的 |
1.3 |
2 |
3.9 |
9.5 |
38.7 |
33.8 |
10.8 |
1353.4 |
社会保険関係団体 |
0 |
2.4 |
6.1 |
13.4 |
43.9 |
26.8 |
7.3 |
1280.7 |
医療法人 |
2 |
1.9 |
3.4 |
10.1 |
29.4 |
36.5 |
16.6 |
1443.8 |
個人 |
3.6 |
1.8 |
0 |
10.9 |
34.5 |
32.7 |
16.4 |
1414 |
学校法人 |
4.8 |
15.2 |
20.8 |
36.4 |
21.2 |
1.7 |
0 |
739.5 |
その他の法人 |
0.8 |
2.4 |
3.3 |
9.8 |
31.7 |
39 |
13 |
1406.4 |
出典:勤務医の就労実態と意識に関する調査 p.30(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)
この年収は、他の経営形態別に見た医師と比較すると少ない部類であることがわかります。(表の年収列に記載されている数値は全体における割合=単位%です。)
また、大学病院の医師と勤務医とでも大きく差があります。
画像は病院勤務医と開業医を比較した情報で平成21年の内容ですが、大きく差が開いていることがわかります。
大学病院医師の年収の特徴
大学病院では、研究や教育などの業務もあり、その点が年収に影響を与えることがあります。大学病院の医師は、診療業務に加えて、医学研究、学生の教育、病院運営など、多岐にわたる業務を担っています。
これらの業務は、診療業務とは異なる専門知識やスキルを必要とするため、時間的にも精神的にも負担が大きくなる場合があります。そのため、大学病院の医師は、診療業務に専念できる市中病院の医師に比べて、年収が低くなる傾向があります。
市中病院と年収差がある背景
市中病院の給与体系と大学病院のそれを比較すると、明らかな収入差があります。市中病院では、診療報酬の直接的な収入が大きく、医師の年収に反映されやすい傾向があります。
一方、大学病院では、診療報酬に加えて、研究費や教育費などの収入も考慮されますが、これらの収入は医師個人に直接分配されるわけではありません。そのため、市中病院に比べて、大学病院の医師の年収は低くなる傾向があります。
大学病院医師の年収が低い理由
大学病院医師の年収が低い理由としては、主に以下3点の理由があげられます。
- 人件費予算の制約
- 医師の人数が多い
- 年功序列による給与体系
人件費予算の制約
大学病院は公的機関であるため、人件費予算に厳しい制約が課されています。大学病院は、国や地方自治体からの補助金や、診療報酬収入などを財源として運営されています。そのため、市中病院に比べて、人件費予算に厳しい制約が課せられています。
特に、医師の人件費は病院全体の予算の中で大きな割合を占めるため、予算削減の対象となりやすい傾向にあります。
医師の人数が多い
大学病院は、高度な医療を提供するために、多くの医師が勤務しています。そのため、医師一人当たりの診療報酬収入が少なくなり、全体的な年収が低めに設定される傾向があります。
また、大学病院では、研修医や大学院生など、多くの医師が教育を受けています。これらの医師は、給与が低く設定されているため、全体的な年収を押し下げる要因となっています。
年功序列による給与体系
大学病院では、年功序列に基づく給与体系が残っている場合が多く、それが平均年収を押し下げる一因となっています。大学病院では、伝統的に年功序列に基づく給与体系が採用されてきました。
そのため、経験豊富なベテラン医師は高収入を得ていますが、若手医師は低収入で、平均年収を押し下げる要因となっています。近年では、能力や実績に基づく評価制度が導入される傾向がありますが、年功序列の慣習は根強く残っています。
大学病院の医師が年収を増やす方法
他の医師と比較して年収が低い傾向にある大学病院の医師が、どのようにして年収を増やすのか、考えられる選択肢についてご紹介します。
高収入な診療科へ転科
診療科の変更は、年収を大きく変える可能性があります。特に高収入な診療科へ転科することで、年収アップを目指せます。
診療科 |
n |
300万円未満 |
300~500万円未満 |
500~700万円未満 |
700~1000万円未満 |
1000~1500万円未満 |
1500~2000万円未満 |
2000万円以上 |
平均金額(万円) |
内科 |
705 |
3.5 |
7.1 |
7.4 |
13.5 |
29.2 |
28.4 |
10.9 |
1247.4 |
外科 |
340 |
2.1 |
2.4 |
4.7 |
11.8 |
27.9 |
39.1 |
12.1 |
1374.2 |
整形外科 |
236 |
4.2 |
3.8 |
2.5 |
12.7 |
34.7 |
33.1 |
8.9 |
1289.9 |
脳神経外科 |
103 |
1 |
3.9 |
2.9 |
10.7 |
21.4 |
40.8 |
19.4 |
1480.3 |
小児科 |
169 |
2.4 |
7.7 |
5.9 |
14.8 |
33.1 |
28.4 |
7.7 |
1220.5 |
産科・婦人科 |
130 |
0.8 |
2.3 |
5.4 |
13.8 |
27.7 |
29.2 |
20.8 |
1466.3 |
呼吸器科・消化器科・循環器科 |
304 |
2.6 |
3.3 |
6.6 |
10.9 |
39.8 |
29.6 |
7.2 |
1267.2 |
精神科 |
218 |
1.8 |
4.1 |
7.3 |
18.3 |
33 |
24.8 |
10.6 |
1230.2 |
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 |
313 |
2.6 |
8.3 |
12.5 |
17.3 |
33.2 |
22 |
4.2 |
1078.7 |
救急科 |
32 |
0 |
6.3 |
12.5 |
18.8 |
21.9 |
25 |
15.6 |
1215.3 |
麻酔科 |
128 |
0.8 |
1.6 |
5.5 |
16.4 |
36.7 |
25 |
14.1 |
1335.2 |
放射線科 |
95 |
5.3 |
6.3 |
11.6 |
16.8 |
33.7 |
22.1 |
4.2 |
1103.3 |
その他 |
103 |
1 |
3.9 |
8.7 |
17.5 |
36.9 |
29.1 |
2.9 |
1171.5 |
出典:勤務医の就労実態と意識に関する調査 p.30(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)
表は医師全体の年収データのため、大学病院の医師に絞った情報ではありませんが、診療科ごとに違いを把握するための参考データとしてご紹介します。
例えば、脳神経外科などの高度な医療技術を必要とする診療科は、高収入を得やすい傾向があります。一方、眼科・耳鼻咽喉科などの比較的一般的な診療科は、年収が低くなる傾向があります。そのため、年収アップを目指すのであれば、高収入な診療科への転科を検討する必要があります。
役職を目指す
教授や准教授、講師などの役職に就くことで、基本給が上がることが期待されます。大学病院では、役職が上がるにつれて、基本給やボーナスが増加します。そのため、年収アップを目指すのであれば、役職を目指していくことが重要です。ただし、役職に就くためには、研究業績や教育実績など、高い評価を得ることが必要です。
過疎地域での勤務
過疎地域での医療貢献は、高収入を得る一つの方法です。これにより、地域医療の充実も図れます。過疎地域では、医師不足が深刻な問題となっており、医師の需要が高まっています。そのため、過疎地域で勤務する医師には、高額な報酬が支払われる場合があります。また、過疎地域では、医師の負担が少なく、ワークライフバランスを重視しやすいというメリットもあります。
医師の転職を考える
医師としてのキャリアを見直し、年収が高い病院への転職を検討することも重要です。大学病院以外の病院やクリニックへの転職も、年収アップの選択肢の一つです。特に、市中病院では、医師の年収が高く設定されている場合が多く、転職によって年収アップを実現できる可能性があります。ただし、転職する際には、自分の専門分野やキャリアプランなどを考慮する必要があります。
まとめ
大学病院の医師は、高い専門知識と技術を有しており、社会に貢献する重要な役割を担っています。しかし、年収面では、他の勤務医よりも低いことが多いのが現状です。年収アップを目指すのであれば、高収入な診療科への転科、役職への挑戦、過疎地域での勤務、転職などを検討する必要があります。自分のキャリア目標やライフスタイルに合わせて、最適な方法を選択することが重要です。