こんにちは、医師で投資家の大石です。昨今、医師業界でも副業という言葉が少しずつ浸透してきています。
医師はただでさえ、医師免許という強力な参入障壁によって守られた「医業」という事業領域を持っていますから、副業なんてあんまり考えないのが普通です。
しかしながら昨今の副業ブームや、医療業界に対する漠然とした不安感、医療費削減の流れから、医師の中にも「医師免許に頼らない収入を作ろう」と考えている人が増えている、そんな印象を受けています。
さて、そんな医師の副業ですが、個人的には「ある程度副業のしやすい診療科は限られている」というのが、僕の感想です。
今回は、副業のしやすい診療科と、その詳細について、少しずつ考えていきたいと思います。
精神科と内科は、産業医との副業シナジーあり
まず、副業としての「産業医」を考えてみたいと思います。
産業医の業務とは、言って仕舞えば会社の顧問医みたいなもの。働いている人の健康はもちろん、働き方、働く場所の健康のあり方などを監督することで、労働によって労働者が健康を害することのないようにするのが役目です。
主な業務としては
・健康診断チェック
・労働環境チェック
・ストレスチェック
・高ストレス者面談
などです。
これらの業務内容に対して、シナジーが高いのが精神科と内科です。
まず、企業の立場に立って考えてみて欲しいと思います。産業医を誰かに頼むとしたら、一体誰に頼むでしょうか?
まず1つは、本社からの紹介を受けてこの産業医にしろ、と言われたパターン。その場合はほとんど断る意味がないので、そのままその産業医に依頼することになるでしょう。
しかしそうでない場合、ゼロから探すことになります。そんな時、可能であれば
「社員の健康診断も、一緒にやってくれる先生が良い」
「休職者やメンタルで休む社員が出た場合、投薬も一緒にやって欲しい」
と思うのは、普通のことではないでしょうか?
前者の場合、やはり内科の開業医とのシナジーが高いと言えるでしょう。産業医から入って、健康診断を一括で受注することで、本業の収入も増えます。もしかしたら社員が体調悪くなった場合の、かかりつけ医として利用してくれるかもしれません。
後者の場合、やはり精神科医とのシナジーが高いと言えるでしょう。産業医から入って、精神科としての患者を増やす、一種の集患活動と言っても過言ではないかもしれません。
本業とのシナジー効果によって、副業として行う産業医としての価値も上がり、かつ最終的には本業の収益性も高める可能性があるのが、この2つだと言えます。
最終的に産業医をメインで考えている先生も、内科や精神科との絡みは必須になってくると思って良いでしょう。
麻酔科は時間的な余裕が生まれやすく、副業につながりやすい
麻酔という仕事は、場所として手術室にしばられる時間が多いものの、時間的には割と余裕のある場合が多い科です。
もちろん、手術の難易度や内容にもよりますが、例えばほとんどリスクのない乳がんの手術であれば、まず何かが術中起こるということは考えにくいと言って良いでしょう。
そうすると、麻酔中に例えばパソコンを叩いたり、iPadに入れてきた電子書籍を読む、くらいのことはできてしまうことが多いです。実際、教科書を読んだり、論文を印刷してきて読んだりしている麻酔科の先生は、結構多いですよね。
仮にこういった、インドアな副業とでも良いましょうか、そういったものができるのであれば、麻酔科は1つ選択肢としてはオススメだと言えます。
むしろ、この余った時間をどう副業として有効活用するか、というところが差別化ポイントになるかな、と思います。かなり難易度は高いので、誰にでもできるというわけではないでしょう。
放射線科は遠隔読影で副業の幅がアリ
麻酔科は場所が限定されて、時間が余っているという性質を持っていましたが、その逆を行っているのが放射線科です。
放射線科の遠隔読影は、場所を選びません。
別にどこにいても、ネット環境さえ整っていれば読影できて、レポートを提出する事は可能です。
しかしながら、逆に場所は選ばないものの、業務として時間は取られます。場所は自由ですが、時間の自由が効かないわけです。
これも、また1つ医師の副業としてはシナジーのある業態があります。当直です。
医師の当直業務は、一般にその価値として「医師が場所を限定される」ことに意味がある業務です。逆に時間的な拘束はあまり受けませんから、例えば当直バイトをしながら、読影をするということで、本業と副業を組み合わせることでシナジーが生まれます。
ただ、ここで注意したいのは、当直中の業務量は運によって決まるというもの。
暇だと思って大量に読影の仕事を持っていったら、今度は当直業務が忙しくて読影が全然できなかった、なんてことになってしまっては意味がありませんね。
ある程度バランスを見極めて、仕事の内容と量を調節する必要があると言えそうです。
いかがでしたでしょうか?医師と副業について、診療科別にその内容、シナジーの高い内容について並べてみました。
おそらく時代の流れ、テクノロジーの進化とともに、今後「医師の副業」の可能性は、幅を広げると思われます。
本当に大事なのは、常にアンテナを高く張っていることかもしれません。
▼著者
大石龍之介
株式会社ブルーストレージ代表取締役。医師としてクリニックに勤務しながら、不動産投資家としても活動している。