今回も引き続き、20年間メガバンクに勤務されたご経験をお持ちの洲濵拓志氏をお迎えし、勤務医の「お金の悩み」についてのスペシャルインタビューをお届けします。
第2回目は、勤務医の老後に向けた資産形成について、ファイナンシャルプランナーである洲濵氏にお話を伺いました。
目次
■超高齢化社会では、勤務医でも老後の資産形成が必要
──超高齢化が進む昨今ですが、日本の年金システムはこのままで大丈夫なのでしょうか?
洲濵氏
いいえ、大丈夫ではないと思います。2019年に「老後2,000万円」問題が話題になりましたよね。「年金だけでは、普通の老後は送れない」ということは明らかです。
年金制度の構造上、年代差で不公平さを指摘されますよね。具体的には、既に年金をもらっている世代の方は、比較的恵まれていますが、現役の若い世代は「払った金額に対して、受け取りが少ない」などの問題に直面するでしょう。これからは、自分の老後は自分で責任を持ってなんとかしなければならない時代にどんどんなっていくと思います。
──所得の高い医師といえど、老後の資産形成について考えなければならない時代が来ているということでしょうか?
洲濵氏
そうですね。資産形成については、所得の高さではなく、税金が引かれた後に手元に残る金額をベースにして考えていく必要があります。所得が高いからといって不要な借金をしたり、浪費すると、危ないと思います。
──夫婦2人で豊かな老後を送るには、月にどれくらいの金額が必要でしょうか?
洲濵氏
まともな老後生活を送るには、毎月38万円ほど必要だといわれています。年間で約450万円ですね。しかしここで注意しなければならないのが、これは一般的なサラリーマンの家庭を想定した平均的な金額だということです。
日頃からゆとりのある暮らしをしている医師の場合は、もう少し多めに見積もったほうがよいでしょう。長年の豊かな暮らしが当たり前になっているのに、いきなり生活レベルを下げろといわれてもなかなか難しいものです。そういった意味でも、老後については早めに考え始めたほうがよいと思います。
■老後の資産形成は、本業と両立しやすいものを選んで
──老後のお金について、勤務医の方からどのような相談を受けてこられましたか?
洲濵氏
「どのように老後の資産を増やしていけばよいか」というご相談もあれば、「現在の出費が老後(リタイヤ後)も続くと思うと不安だ」というお悩みもよくお受けします。どちらかといえば、後者のお悩みのほうが多いですね。
不動産投資をしている方から「65歳で引退するつもりなのに、75歳までローンの返済が残っている」というご相談をいただいたことがあります。こういった場合は、その不動産を売却してローンを返すか、あるいはその売却後の資金で再投資するなどといった手立てが考えられます。実際に地方の不動産を売却して、価値が下がりづらい都心のワンルームに買い換えた方もいます。
「投資用の不動産を買いすぎてしまい、ローン返済に困っている」というご相談もありました。社会的な信用も収入もある医師が相手となると、銀行のローンの審査はゆるくなってしまう傾向があります。収支のバランスを取れるのかどうか、借りすぎではないか、自分なりの判断基準を持つことが大切です。
──老後に向けた資産形成のなかで、取り組みやすいものを教えてください。
洲濵氏
まずは大きな資金を投入せずに、小口で毎月積み立てできるものを選ぶのがよいと思います。取り組みやすいものとしては、投資信託による長期分散投資が挙げられます。例えば月々5万円の積立をするならば、2万円を日本の株、2万円を海外の債券、残りを日本のリート(REIT「不動産投資信託証券」)というふうに一定の比率で投資対象を分散させます。これのような資産配分をポートフォリオといいますが、自分なりのポートフォリオを判断できるようにすべきです。そして、以前もお話しした通り、資産を増やすためには一定のポートフォリオ(資産配分比率)での長期運用が重要なのですが、市場の動向によってポートフォリーリオの比率は崩れるのが普通です。単価が上昇し、配分比率を超えた種類(債券、株など)と、配分比率よりもへこんでいる部分が出てきます。
そこで、前者の超えた部分を売却したお金で、後者のへこんだ部分を購入して、ポートフォリオの配分バランスを保ちます。そうすれば長期間ののちに、期待できる収益が得られる、ということが過去のデータから実証されているのです。
これだけのことなのですが、やり方を教えてくれる専門家はほとんどいないのが実情です。(わかりにくいかと思いますが、別途、セミナーなどでの図解や説明が必要かと思います)
ある程度の自己資金がある場合は、不動産投資もひとつの手段です。家賃収入がすべて不動産のローンで消えてしまわずに、多少は手元に残るような組み立てをするとよいですね。
積立で自己資金を貯めて、ある程度貯まったところで不動産に投資するなど、金融資産を活用したうえで、不動産投資のステップに移行すればスムーズかと思います。
そして不動産投資においては自己資金と借入のバランスも大事です。
金融資産の運用において、株や債券やリート(REIT「不動産投資信託証券」)などのポートフォリオが大事とお話ししました。
されに、これに不動産投資を加えた資産全体のポートフォリオについて、自分なりの判断基準を持っておくことが重要です。
──さまざまな資産形成の方法がありますが、避けた方がよいものはありますか?
洲濵氏
特定の株を「この銘柄は上がるに違いない」と当てにいったり、高値や底値を狙ったり、プロの投資家のようなやり方はおすすめできません。日々上下するマーケットに一喜一憂して、本業に集中できなくなってしまいます。それよりは積立をするほうが確実ですし、不動産も一度購入すればずっと働いてくれますよ。
■早めの対策が必要といえど、焦らず正しく理解することが重要
──他の職業に比べて現役期間の長い医師ですが、老後に向けた資産形成は早めの対策が必要でしょうか?
洲濵氏
そうですね。何をするにせよ、早めに考え始めるのがよいと思います。積立をするなら早く始めるほど多くの資金を積み上げられますし、不動産のローンを組むにしても期間が長いほど返済が楽になります。
とはいえ、慌てず焦らず取り組むことも重要です。医師は社会的な信用度の高い職業ですから、保険や株、不動産など、いろいろなところから営業を受けますよね。そのような中、たまたま話を聞いたセールスマンにすすめられるままに契約書に判を押してしまったというケースが実はとても多いのです。
そういったご相談をいただくと「もう少し早く相談に来ていただいていれば」と、いつも歯痒い思いをします。
正しい判断基準があれば、商品説明が詳細まで理解できなくても、正しく選ぶことができます。
日本人は教育制度の影響もあって、この判断基準つまり金融のリテラシーというべき知識が不足しています。私はここのお客様の相談に対して、基礎となる判断基準を重視してアドバイスしてしてきました。決断する前にご相談いただければ、金融資産の運用や不動産投資など、失敗しないようアドバイスをすることができます。正しい判断基準で、資産形成に取り組んでいただきたいですね。
本業で忙しく、資産形成を考える時間が取れない方は、ぜひ私を含めた専門家に相談していただきたいと思います。
――ありがとうございました。
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