
2023年05月22日
せん妄による性的幻覚か、それとも……? あの“手術後わいせつ”事件の医師の裁判はどうなった!?

まじめな乳腺外科の専門医が、ある日突然刑事事件の容疑者に……。そんな悪夢のような事件の裁判が、東京高裁で続いています。
2016年、ある男性医師が女性患者に乳腺腫瘍摘出手術を施した後、女性の胸をなめるなどのわいせつな行為をしたとして、準強制わいせつの容疑で逮捕されたのです。
今夏で逮捕から7年。いまなお続く裁判は、なぜここまで時間が掛かっているのか。そして、事件の真相はどこにあるのか。これまでの経緯を振り返り、今後の展望を見通します。
“術後の女性の胸をなめた”疑いで執刀医が逮捕される

“事件”があったのは、2016年5月10日。東京足立区の小病院で、看護師も出入りしていた午後3時ごろ、4人部屋の病室で起きました。乳腺腫瘍の摘出手術を受けた30代の女性がベッドで横たわっていたところ、執刀を終えた40代の男性医師が女性の服をめくり、胸を露出させてなめるなどのわいせつな行為に及んだというのです。
女性はナースコールし、被害を報告。約3カ月後に男性医師は逮捕されることになりましたが、事件が異例の事態をたどるのはここからです。男性医師の逮捕直後、事件の舞台となった所属病院が「逮捕の不当性について抗議する」とし、男性医師の拘束が「不当逮捕」だと訴える文章をホームページ上に公開したのです。医療機関がこうした声明を出すことは極めて珍しいといえます。
病院はなぜこのような声明を出したのでしょうか? 理由は手術後の患者の容体に関係しています。病院は術後間もない女性患者が「全身麻酔で術後せん妄状態に陥り、幻覚や錯覚が織りまざっていた」と指摘。職員などに聞き取り調査をした結果を踏まえても、わいせつ行為はなかったと主張しています。
執刀医や病院は「術後のせん妄であった可能性」を主張し徹底抗戦

男性医師も逮捕当初から容疑を否認。弁護士には、日本の刑事弁護界で「三大弁護人」と呼ばれるうちの1人で、あの日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告の弁護人も務めた高野隆弁護士がつき、徹底抗戦の構えを見せます。また、東京保険医協会などが医師の冤罪を訴えて署名を集めるなど、支援の輪が大きく広がっていきました。
ここで気をつけなければならないのは、医師を支援する方々は「女性が悪意を持って男性医師を陥れようとした」などという主張は全くしていないことです。





