
2022年09月06日
【現役医師連載コラム】医師必見!これから日本の医療業界で起こる5つの事

今、日本の医療業界は変革を迫られています。
新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、その大きな変革の波に対応するべく、動いている医療業界ではありますが、コロナが落ち着いたとしても、日本の医療業界が落ち着く事は無いでしょう。
なぜならば、大きな波が押し寄せる事が、わかっているからです。
一体どんな現象が起こるのか、それに対応するために医師には何ができるのか。
考えていきます。
1. 女性医師の増加

まず確実に訪れるのが、女性医師増加の波です。
僕が卒業した時で、概ね女性20%程度だったのですが、今や50%を超える大学もあるようです。おそらくこの流れは、ポリティカルコレクトネス的に抗えないので、継続するでしょう。
そうなると、これから新たに排出される医師のうち、女性の比率が増していくわけですが、これが全年齢に波及するまで、およそ20〜30年はかかるでしょうから、医師全体に占める女性医師の割合は、まだあと20年、30年かけて増大していく事が予想されます。
それに伴い、おそらく
2. 慢性期需要へのシフト、利幅減少

日本の少子高齢化に伴い、医療が急性期から慢性期へのシフトが進んでいます。
伴って、慢性期医療の参入障壁の低さから、競争がそれなりのスピードで起こっているため、診療報酬の引き下げも素早く、利幅が減少する事が予測されます。
家賃や人件費など、固定費を高いまま放置しておくと、経営が立ち行かなくなる慢性期医療施設も、出てきそうです。
3. 総合病院の経営不振、統廃合

上記に伴い、急性期の機能を有する総合病院は、経営が苦しくなります。
人口が減少し、人々が中心地により集まって住むようになり、最終的には過疎地域の医療需要は減少、医療需要が「総合病院の経営維持に必要なライン」を割ったところで、総合病院の維持が持続不可能になるエリアが出現します。
そうなると、病院は廃業させるか、統合させるかしかありません。
総合病院が消滅したエリアでは、さらに人口流出が進むでしょうから、その土地の財政維持さえ、難しくなり得ます。
遠い将来に起こる事のように思えますが、事実、喫緊の課題として総合病院の経営赤字は大きな問題となっている地方は、多く存在しています。
病院の統廃合は、近い将来やってくる。その波に備えて、今やるべき事は何か考えておく必要があると言えるでしょう。
4. 医師の給料のエリア格差増大

医療需要が、総合病院の維持ラインを割ってくる地方が、出始めると、当然ながら医師や看護師などの医療従事者へ渡す給料も、減らさざるを得ません。
実際、そのような理由で人口減少が著しい
・鳥取県
・島根県
・和歌山県
などでは、医師の全国平均年収である1169万円を、大きく下回っています(鳥取県、765万円、島根県、777万円、和歌山県、702万円)。
一方で、人口がそれなりにいるにもかかわらず、なぜか医師が少ない愛知県などでは、平均1357万円となっており、2倍近い格差が開いているとも言えます。

これは人口過疎地域での医療需要減少に伴う経営不振により、医師の給料が下げられているという事もあるかもしれませんし、さらに言えば美容や自由診療領域の需要の差でもあるとも考えられます。
いずれにせよ医師の給料が、エリアによってかなり異なる現象も、今後はさらに進行していく事でしょう。
5. 医師の給料の減少

エリアごとに格差を生じさせながらも、医療需要が供給に対して減少するのは、全体として見られる現象になるはずです。
唯一望めるのは、完全なる自由診療領域ですが、こちらは完全にビジネスの世界。勝者総取りの原理で、プロがマーケティング技術などを駆使し、かっさらっていくでしょう。ビジネスの素人である医師が個人で参戦したところで、勝ち目が薄いはずです。
医師の給料減少は、男女差や職務差、専門科、エリアなどの「多少のグラデーション」を描きながら、少しずつ進行すると思われます。
おわりに

いかがでしたでしょうか?コロナの後、これから訪れる医療界への大きな波。
これらについて、考え過ぎて身動きが取れなくなってしまっては本末転倒ですが、ある程度は考え、キャリアを選択し、リスクをヘッジしていく事は、長い目でみれば重要ではないでしょうか。
≪現役医師連載シリーズ≫

