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【現役税理士連載コラム】医師の執筆・監修・講演料などは雑所得?事業所得?

医師の中には、講演や執筆を行っている方もいらっしゃいます。講演や執筆に対して報酬や謝金が発生したときに疑問に思うのが「これは確定申告をしなければいけないの?」という点です。

実は、医師の方は、複数の病院で働いていて、確定申告をしている方が多いため、より問題を複雑化させます。

今回はそうした執筆・監修・講演料に関わる確定申告についてご紹介します。

ドクターの執筆・監修・講演料は申告が必要?

所得税に関していえば、副業として原稿料や講演料などで年間20万円以上の所得を得ている場合は、確定申告が必要だということです。

国税庁のHP「確定申告が必要な方(2)」に記載のあるとおりとなります。

確定申告が必要な方~

(1) 給与の収入金額が2,000万円を超える

(2) 給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える

(3) 給与を2か所以上から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)との合計額が20万円を超える

※(4)~(6)は省略

では、20万円未満であれば、確定申告が不要かというとそうではありません。

「国税庁のHP 確定申告が必要な方(1)」に記載のあるとおり給与収入金額が2,000万円を超えている場合や、「確定申告が必要な方(3)」にある給与所得を2か所以上から受けていて年末調整されなかった収入金額が20万円を超える場合には、確定申告が必要ということになり、この場合には、雑所得も含めて申告が必要になります。

よく雑所得が20万円未満だから、確定申告をする場合にも除外できると勘違いされている方もいますので注意が必要です。

医師の方は、確定申告をされている方が多いので、確定申告をしていれば雑所得も含めて申告が必要になります。

医師の副業の申告―事業所得か雑所得で何が違う?

執筆・原稿料・講演料など(以下、「執筆等」とする)を申告する場合、事業所得か、雑所得のいずれかが考えられると思います。

「どちらになるか?」の判断はのちほど説明するとして、どのように違うのでしょうか。

雑所得は経費が計上できない?

自分で申告をされている方は、よくある質問として、「事業所得は経費が認められる」けど、「雑所得は経費が認められない」という質問があります。実際は、事業所得も雑所得も経費が認められます。

また、「事業所得は消費税が課税される」けど、「雑所得は消費税が課税されないというのもよくある質問です。国税庁のHPで消費税の「事業」は所得税の「事業」の範囲より広いと書いてあり、消費税においては、「同種の行為を反復、継続かつ独立して遂行すること」をいいます。

ドクターの「執筆等」は、専門的知識によって提供するものなのでたとえ1回きりでも課税取引と考えて良いと思います。

このように考えると事業所得でも雑所得でもほとんど違いがないように思います。

「事業所得であれば、帳簿が求められる」というイメージかもしれませんが、この点についても、令和2年度の所得税法改正で令和4年度から帳簿が必要となるケース(収入が300万円超で事業と認められない場合)があるのでほとんど違いがありません。

<ポイント>
事業所得だけでなく、雑所得でも300万円を超えるケースでは帳簿が必要であり、帳簿を付ける習慣を!

事業所得になると実はメリットが大きい

ただ、実は、「事業所得」となると下記のように税務上の大きなメリットがあります。

事業所得  雑所得
給与所得などとの損益通算 ×
純損失の3年繰越 ×
青色申告特別控除 ×
青色事業専従者 ×
設備投資減税などの税制優遇(少額減価償却資産) ×

特に青色申告特別控除や副業の場合は、給与所得との損益通算をねらって事業所得にしてマイナスにする人などがいるため、「赤字の継続」と「事業性の判断」が問題になったりしています。

ドクターの執筆・監修・講演料は事業所得?雑所得?

副業として行っている「執筆等」で年間20万円以上の所得を得ている場合や医師として確定申告をしている場合は、確定申告が必要だということは、記載しました。
では、「執筆等」の所得区分は、何になるのでしょうか。

税法上の事業所得・雑所得の説明ないし考え方

所得税法では、「事業」ないし「事業所得」そのものの意義を明らかにしていません。ただ、弁護士顧問料事件最高裁昭和56年4月24日判決で、典型的な事業の概念が述べられていて、その説明を用いることが多いです。

その内容とは、「事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」としています。

また、所得税法35条1項において、「雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。」とされており、他の所得の概念を定めることで決まります。

これでは、どうしたらよいかわからないですよね・・・・。

近年では、この社会通念上というところに関連して、「働き方の多様化」や「副業等の解禁」の動きに伴い複数の収入を得ている者が増えているためより難しさを増しています。しかし、副業を雑所得として申告する場合に帳簿が義務付けられていないという問題も発生していました。

そこで、令和2年度の所得税改正(令和4年分以後の所得税について適用)や所得税基本通達の改正へとなったため、参考にしながらドクターの場合、どうなるか見ていきたいと思います。

「雑所得の範囲」に係る税制改正等とは

令和2年度の所得税法改正では、雑所得に関係するものとして以下のようになりました(令和4年分以後の所得税について適用)。
前々年分の雑所得を生ずべき業務に係る収入金額が

・300万円以下など一定の要件を満たす者について現金主義の適用が認められる
・300万円超の場合 現金預金取引等関係書類を5年間保存しなければならない
・1000万円超の場合 確定申告の際、収支内訳書の添付義務が課される

帳簿の備付けが求められるケース

この他、「事業所得等を有する者の帳簿書類の備付け等(所法 232)」として「雑所得を生ずべき業務を行うものでその年の前々年分のその業務に係る収入金額が 300 万円を超えるもの」という要件があります。

ただ、結局、雑所得か事業所得かの区分について不明確であるため、令和4年8月に雑所得の範囲を明確化する所得税基本通達の改正案が公表され、令和4年10月7日に公表されるに至っています。パブリックコメントで意見を募集した結果、副業や働きながら起業している人などに対して配慮した改正となっています。

雑所得と事業所得の範囲とは

① 収入が300万円を超えていれば事業所得(収入によって事業的規模を判定)
※この場合、働きながら起業した人で収入が少ない人に対する配慮がない。
②本業か副業かは問わず、記帳・帳簿書類の保存をしていれば、収入が300万円以下でも事業所得として区分できます。

但し、事業というのは、収入を増加させる、あるいは、所得を黒字にするための営業活動を実施していない場合には、事業かどうかを個別的に判断するとしています。
国税庁のHPでは、次のような場合に事業かどうかを個別的に判断としています。

・その所得の収入金額が僅少と認められる場合 例えば、その所得の収入金額が、例年、300 万円以下で主たる収入に対する割合が 10% 未満の場合は、「僅少と認められる場合」に該当すると考えられます。 ※「例年」とは、概ね3年程度の期間をいいます。
・その所得を得る活動に営利性が認められない場合 その所得が例年赤字で、かつ、赤字を解消するための取組を実施していない場合は、「営利性が認められない場合」に該当すると考えられます ※「赤字を解消するための取組を実施していない」とは、収入を増加させる、あるいは 所得を黒字にするための営業活動等を実施していない場合をいいます。

このように考えると勤務医が副業で「執筆等」を行っている場合には、収入金額が主たる収入の10%以上になるかどうかが1つの判断基準になるように考えられます。ただ、10%未満であっても、年々「執筆等」の収入が増加傾向にあれば、事業として考えることも可能だと考えられます。

まとめ

医師の執筆・監修・講演料などは雑所得?事業所得?

何が雑所得で何が事業所得かは、以前は不明確でした。

それが、令和2年度の所得税改正から働き方が多様化し、副業や働きながら起業をするなど様々な形で複数の収入を得るように社会が変化してきました。

令和4年の基本通達の改正では、雑所得の範囲が明確になりました。内容としては、収入の基準、帳簿を備えているかどうかという判断基準で事業所得か雑所得かで判断されますが、収入が基準を満たしていなくても増やしていく営業努力をしているかなど事業と判断する基準が明確になったため、医師が執筆・監修・講演をどのように取り組んでいるかによって事業所得にできるかが決まってくるため注意が必要です。

また、帳簿をつけたり、領収書をとっておく習慣づけをすると良いです。

税理士連載シリーズ


▼著者
疋田税理士公認会計士事務所
税理士・公認会計士 疋田 通丈

税理士として、一般事業会社だけでなく、クリニック、NPO、社会福祉法人など幅広く税務・会計の支援を行うだけでなく、公認会計士として、医療法人、公益法人、学校法人の会計監査に携わっている。

URL:http://www.hikidakaikei.jp

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