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【税理士連載コラム】医師も知っておきたい税務調査の実態「税務調査は断れるのか?」

税務調査と聞くと、どのようなイメージをお持ちでしょうか? 古くは映画「マルサの女」や時折ニュースなどで報道されるように、スーツを着た無表情無機質な人々が情け容赦なく会社や家などに押し入り、ダンボールなどに書類を詰めてガンガン押収するということを想像されるかと思います。

このような税務調査は査察や強制調査と呼ばれます。しかし一般の納税者に対して行われることはほとんどなく、通常は任意調査という形で行われます。

■「税務調査」は任意だが…

任意調査では一部の例外(たとえば現金商売による無予告の調査というのもがありますが、これも任意調査の一つの形態です)はありますが、通常は納税者と調査官がお互いに都合のいい日時にアポイントを取り調査官が納税者の元に訪れる、または納税者に税務署への来署をうながすといったもので、無理矢理調査官が書類等を押収するということはありませんし、日時等の調整もできます。

犯罪捜査などに詳しい方なら「任意なら断れるんじゃないの?」と思われるかもしれません。しかし警察などが行う任意聴取や任意同行を求める任意捜査と、税務署職員が行う任意調査はどちらも言葉こそ同じ「任意」が付いていますが、似て非なるものです。

結論から先に申し上げると、任意であっても税務調査そのものを断るということは出来ません

■納税者から適切な額の税金を徴収するために

日本では所得税、法人税、消費税、相続税といった主な国税は「申告納税制度」が採用されています。申告納税制度では納付すべき税額を納税者自らが計算し、確定することを原則としています。

しかし誰だって進んで税金を多額に納めたいとは思わないので、すべての税額計算を全面的に納税者に委ねてしまうと税法に定められたとおりに申告と納付がされない可能性が高いです。そこで法に則った適正な申告がなされているかどうかチェックする必要があり、それを担うのが税務署による税務調査です。

この税務調査を行うに当たって税務職員が職務を遂行しやすくなるように与えられている公権力。それが「質問検査権」です。

国税通則法第74条の2

『国税庁、国税局若しくは税務署又は税関の当該職員は、所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めることができる。』

上記条文から質問検査権は「調査について必要があるとき」に行使できると規定されています。したがって「なぜ私(または私の会社)に調査に来たのか?」という質問は意味がなく、調査官は「必要があるので来ました」としか答えません。また調査の対象物は「その者の事業に関する帳簿書類その他の物件」と個別具体的に規定されているわけではないのでその範囲は広いといえます。

■税務調査を断れない理由は条文に規定

そしてなぜ納税者が税務調査を断れないかというと、税務調査官による「質問検査権」の行使に対して納税者が取らなければいけない姿勢が次の条文で規定されているからです。

国税通則法第128条

『次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
二 第74条2の規定による当該職員の質問に対して答弁をせず若しくは偽りの答弁をし又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ若しくは忌避した者
三 第74条2の規定による物件の提示又は提出の要求に対し、正当な理由が無くこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件を提示若しくは提出した者』

この条文により、もし税務調査を拒否したり嘘をついたりすれば、1年以下の懲役、または50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。一般的にこれは税務調査の受忍義務と言われています。一般の犯罪捜査でも認められている「黙秘権」すら、税務調査では納税者に認められていないので税務調査を拒否することは事実上できません。「任意」という言葉が付いていてもある意味犯罪捜査よりも厳しい規定なのが税務調査の法的な位置付けです。

上記条文は税務調査における納税者の姿勢を規定しています。しかし逆に調査官の姿勢を規定しているものもあるため、税務調査の際は覚えておいた方がいいと思います。

■高圧的な態度を取られたら

国税通則法第74条の8

『当該質問検査権等の規定による当該職員の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない』

検査と捜査は似たような意味の日本語ですが、捜査はその対象がすでに罪を犯したことを前提にして調べるという意味になります。税務調査の現場では、警察による犯罪捜査のように高飛車で腹の立つ態度で接してくる税務職員も相当数います。

そのような時に「国税通則法第74条の8によると、質問検査権は犯罪捜査ではないんですよね。犯罪捜査ではないのにそのような態度はいかがなものかと思います」と現場で調査官について釘を刺すということはあります。税務調査における決定的な一言にはなりませんが、質問検査権の法的な位置づけを知っていると調査官に思わせることで、税務調査が有利に働くこともあるでしょう。

税理士連載シリーズ



▼著者
トランス税理士法人 代表税理士
中山 慎吾

東京税理士会所属(登録番号 第140269号)法人税務から個人税務まで幅広い税務相談に対応可能自ら不動産(区分マンション)を運用し、実体験を元に講演するセミナーが好評を得る。平成30年、明治大学大学院グローバルビジネス研究科を修了しMBA取得。主な保有資格:税理士、CFP、1級ファイナンシャルプランニング技能士、宅地建物取引士、管理業務主任者

トランス税理士法人
URL:https://zeikinherasu.jp/

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